堀・船津の中国旅行記
遼寧省
瀋陽

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7月1日早朝、集安11:20発の長距離バスで瀋陽に向かいました。集安市から国道303号線を北上し通化市まで約110キロの道のりです。この道は長白山から集安に入る時に通った道です。通化市からは長白山方面(東)とは逆方向となる西に進路をとります。国道201号・省道303号を通り、途中から瀋吉高速に入って瀋陽に向かいます。瀋陽までの距離は417キロあります。瀋陽市街には瀋陽駅瀋陽北駅の2つの駅(特記事項参照)がありますが、集安からのバスは瀋陽北駅に到着しました。所用時間は途中2回のトイレ休憩を挟んで約6時間でした。
瀋陽市は、遼寧省の省都で、2011年現在の人口が800万人を超え東北地方最大の都市です。17世紀初、満洲族のヌルハチは後金を建国し瀋陽を都としました。後金は後に清国と改め、明朝の滅亡後の中国を支配する事となりました。清国は北京に遷都しましたが瀋陽はその後も副都として扱われました。都の故宮「紫禁城」
に対し、副都の故宮は「瀋陽故宮」として現在も残っています。1932年関東軍により建国された満洲国の時代には奉天市と呼ばれましたが、1945年の終戦によって、満州国が中国に返還された時再び瀋陽市と改称されました。現在の瀋陽市は、東北地方最大の都市だけあって、何処も人や車が溢れています。毎日が「スモッグに中・・」と言っても過言ではないほど空気が悪く、一日で喉に痰が絡んだり、鼻くそが溜まる程です。窓を開けて走るタクシーの中では、思わずハンカチで鼻と口を覆いたくなる程です。瀋陽市の観光ポイントは、広い範囲に点在しているのでタクシーが効率的です。市街エリアでは瀋陽故宮博物院shenyang gugong bowuyuanとその周辺、市外エリアでは福陵fuling(市の東に位置する事から通称「東陵」と呼ばれています)・昭陵zhaoling(市の北に位置する事から通称「北陵」と呼ばれています)辺りです。まずは郊外のポイントからご紹介しましょう。
福陵(通称:東陵)は「東陵公園」として一般公開されています。2004年世界遺産に認定されました。瀋陽北駅から東へ16キロ程の所にあります。タクシーで約30分、料金は約40元です。女真族(今の満州族)大王であり明を倒して清王朝を建国したヌルハチとその皇后イエホナラの陵墓です。ヌルハチの息子であるホンタイジ(太祖)が32年をかけて1651年に完成させたものです。市街地に近い昭陵(通称:北陵)に比べ、比較的遠いので観光バスで乗りつける観光客も少なく静かで落ちついた雰囲気です。公園内は緑が多く特に松の木が多いのが特徴です。

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陵は、中華様式と満州様式が合わさった独特のもので、大紅門外区(周囲は紅い壁で囲まれている)、神道区(墓前に通ずる道)、方城区(陵墓の中心で墳丘墓がある)の3つの区で構成されています。陵内の主な見所は下図の通りです。
下図@=正門前広場
に立つと正面に大紅門(正紅門)があります。その両側に石碑坊(=下馬坊=馬を下りる場所を示す坊)が建っています。入門票売り場は大紅門の横にあります。A=神道区神道(参道)。両側に、駱駝獅子の四対の石獣の彫像があります。中でも馬は、ヌルハチが騎乗したモンゴル馬とされています。 B=108段の石段。C=二層屋根の碑楼(碑亭)。碑楼の中には亀の背(亀趺)に乗った巨大な石碑があり、皇帝の偉業が漢字と満字で記されているのだそうです。D=三層屋根の隆恩門。陵の中心部である方城区の入口に当ります。方城を囲む城壁の高さは5m、周囲が370mあり、その四隅には角楼が建っています。E=隆恩殿。方城区の中心となる建物です。F=西配殿。G=東配殿。H=二柱門と大明楼。大明楼の前には、石刻の五供段があります。真ん中が香炉でその両脇に花瓶や燭台となっています。I=ヌルハチの陵墓(宝頂)
(注)方城区を囲む城壁に登る事が出来ます。城壁の上からは方城区全体が見渡せます



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昭陵(通称:北陵)は、「北陵公園」として一般公開されています。2004年福陵と一緒に世界遺産に認定されています。瀋陽北駅から北へ5キロ程の所にあります。タクシーで約10分、料金は約15元です。地下鉄2号線北陵公園駅が最寄駅です。東陵と北陵は約20キロ離れており、タクシーで移動する場合は、所用時間約30分で料金40元程です。ヌルハチの息子であり清国第2代皇帝ホンタイジと皇后の墓陵です。清の関外三陵(昭陵・福陵・永陵)の中では最大規模を誇っています。北陵も東陵と同じ、大紅門外区、神道区、方城宝城区の3つの区で構成されているのですが、違いは陵を含む公園の広さが圧倒的に巨大な事です。北陵公園の広さは3,180,000uもあり、実に東京ドーム(47,000u)の68個分もあるそうです。その為、公園入口から北陵の正門となる大紅門までの参道は優に2キロ位ありそうです。北陵公園とその中の昭陵エリア内の主な見所は下図の通りです。
@=公園の正門
。電動カート(10元)乗り場もあります。参道を歩き始めると右手に池があります。木々の緑と相まって市民の憩いの場になっています。A=ホンタイジの銅像。銅像から少し歩くと、左右に下馬碑(馬を下りる場所を示す碑)が建っています。その先には、左右一対の円柱(華表柱=陵墓を豪華に見せる飾りの意味を持った柱)があります。「古松」と書かれた松の木もあります。樹齢370年程と書かれているので余り古松でもなさそうですが・・)。B=石碑坊。C=大紅門(左右の壁に描かれた龍が必見)。D=神道区。道の両側には石像生(駱駝、馬、獅子、麒麟、象の石獣の彫像)があります。E二層屋根の大碑楼(碑亭)。碑亭の中には亀の背(亀趺)に乗った巨大な石碑があります。F=三層屋根の隆恩門(右写真)。陵の中心部である方城区の入口に当ります。G=隆恩殿。方城区の中心となる建物です。H=大明楼(写真手前の隆恩殿の後方が大明楼)。大明楼の前には、石刻の五供段があります。I=ホンタイジの陵墓(宝頂)


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市街エリアの見所は、瀋陽北駅から4キロ程の所(ほぼ市の中央)にある瀋陽故宮博物院とその周辺にあります。地下鉄1号線中街駅又は懐遠門駅が最寄駅です。この界隈には瀋陽市の二大繁華街の一つ中街があります。中街から博物院に向かう正陽街には、東北地方の二人転(日本の漫才の様なもの)をやっている劇場劉老根大舞台があります。では順にご紹介しましょう。
瀋陽故宮博物院
は、清王朝を建国した太祖ヌルハチと第2代皇帝ホンタイジの皇居で1625年に建てられました。ホンタイジが北京へ遷都した後は、離宮として使用されました。瀋陽故宮の広さは北京故宮の12分の1程ですが、それでも6万uもあり、建物の数は114もあります。故宮内の主な見所は右図の通りです。
故宮内は、正門である大清門
(右図@)から見て、中央が中路(第2代皇帝ホンタイジエリア)、右側が東路(太祖ヌルハチエリア)、左側が西路(第6代皇帝乾隆帝エリア)に分かれています。見学順路は、右側の東路→中央の中路→左側の西路が一番効率的ですからこの順路で紹介します。
@=大清門
。F=崇政殿。その前を右(東)に向かうとヌルハチエリアがあります。A=ヌルハチエリアの広場。広場の両側には、十王亭が並んでいます。左翼王・右翼王(左大臣・右大臣に相当)と「八旗(はっき)」の軍団長が政務を執った10の建物の事です。 B=大政殿。大典が行われていた所で、瑠璃瓦の八角二層の建物です。漢・満・蒙の3民族の特徴を持った建物だそうです。大政殿の左手奥に中路に通じる出入口があります。中路の一番奥に当たる場所です。C=磨房(製粉所)。D=清寧宮(ホンタイジの皇后の住居棟)。左右にも永福宮等4つの建物がありますが、4人の側室の住居棟です。E=鳳凰楼。後宮の正門にあたります。F=崇政殿。ホンタイジが政務を執った所です。崇政殿の左右に左翼門と右翼門があるので、右翼門を出て右に行くと西路の門があります。西路は迷路の様な状態で建物も変わり映えしませんが、G=文溯閣。四庫全書を収めた所。H舞台、などがあります。
中街
は、瀋陽2大繁華街の一つで百貨店やブランドショップ等もあり日本の渋谷とか原宿と言った所でしょうか。通りは歩行天になっていました。薬房では各種の高麗人参を売っていました。
劉老根大舞台
は、清朝末期の1908年に開かれた「慶豊大舞台」が始まりだそうで古い歴史を持つ劇場です。満州国時代は「奉天大舞台」と改称されたりと、何度の改称を経て現在に至っているそうです。出し物は東北地方独特の演芸である二人転で、男女が演ずる軽妙な掛合いに歌あり踊りありと賑やかな演芸です。言葉が分からなくてもそこそこ楽しめますが、欠点は入場料がバカ高い事です。二階席でしたが300元もしました。どのような階層の人が見に来るのでしょうか?言葉が分からない外国人にはちょっと勿体ない気もします。ちなみに開演中は撮影禁止でした。
2010年の旅は、蒙古自治区から始まり東北3省を北から南下し、瀋陽に至る、2週間の旅でした。2011年は、五台山や泰山がある華中を予定しています。
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[特記事項]
記載情報の入手日(=旅行日):2010年7月
瀋陽桃仙国際空港:(瀋陽市東陵区)市街地の北東約30kmのところにあります。リムジンバスは、空港と瀋陽駅(駅近くの太原街(馬路湾)に到着、地下鉄1号線太原街駅に近い)や瀋陽北駅(駅近くの恵工広場に到着、2号線金融中心駅に近い)近くを結んでおり所用時間1時間弱、料金は15元です。タクシーなら30〜40分程で料金は約80元です。
鉄道駅:瀋陽市街には瀋陽駅と瀋陽北駅の2つの駅があります。瀋陽駅は古く、満州国時代は奉天駅と呼ばれていました。1910年竣工の赤レンガの駅は東京駅をモデルとして建てられたものです。 瀋陽北駅は新しい駅で、主要都市への列車の多くはここから出ています。瀋陽北駅と瀋陽駅は6キロ程の距離でタクシーで15分程かかります。
地下鉄:瀋陽市街には、(2014年2月現在)南北に走る2号線、東西に走る1号線の2本の地下鉄があります。1号線は2010年9月に、2号線は2011年12月に開通したばかりで、旅行当時は工事中でした。地下鉄情報は旅行後に追記したものです。
長距離バス:瀋陽市内には複数のバスターミナルがありますが、主な駅は瀋陽駅付近の「南駅長途客運駅」(南駅長距離バスターミナル)、瀋陽北駅付近(郵政大厦の前)の「瀋陽北駅広場中央客運駅」(瀋陽北駅広場中央バスターミナル)、五愛市場にある「五愛客運駅」です。この内、瀋陽北駅広場中央客運駅は、集安、大連、長春等の高速バスが離発着しています。
瀋陽のタクシー事情:初乗りは一般(空調無し)8元、空調付き9元です。タクシーの台数は多いのですが、流しのタクシーはなかなか拾えません。手を挙げていると乗客を乗せたタクシーが「何処へ行くか」と聞いてきます。需要と供給の関係でこのような乗合タクシーが主流となっています。同じ方向だと乗せてくれますから、予め行き先を紙に書いておくと良いです。バスターミナルや列車駅の周辺では、法外な料金を吹っかけるタクシーが客待ちしていますから、むしろ駅周辺から少し離れた所まで歩き、乗合で流しているタクシーを探した方が安全です。流している一般のタクシーは空調が無く夏でも窓を開けたまま走っています。瀋陽の街は、スモッグや埃で空気がとても悪いので咳や痰が出やすくなります。気になる人はマスクを常用した方が安心です。観光等で少し離れた所に行く場合はホテルのタクシー乗り場から空調の効いたタクシーに乗った方が安全です。
瀋陽の料理:瀋陽は朝鮮族が多い為、高級な店からファミレス的な店まで沢山の朝鮮料理店があります。脂っこい中華料理にあきたら、冷麺なんか良いですよ。
宿泊したホテル:瀋陽世紀国際大酒店

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.R.HORI & Y.FUNATSU
公開日: 2002.08.10 更新日2014.05.28